創作として。


春。1日を公平に二つに分ける日の辺り。
その人の誕生日はやってくる。
この国ではその人の誕生日の頃、
先に逝った人に思いを馳せる季節でもある。


その人が生まれた日、
その人がもうこの世にいないことを改めて感じるのは、
そのせいなのだと思っている。


もう10年以上経つ。
生前、その人はさらりとこんな言葉を残した。
「人間はほんの一瞬で
鏡の向う側に倒れ込んでしまうこともある
と自覚している」
実際、その人は一瞬で鏡の向こう側へと消えた。


知り得る限り、何事も有言実行の人だったと思う。
その最期の時ですら、
かつて何気なく言ったのだろうその言葉通りだった
という事実に、今でも遣りきれなくなる。


世間の人が忘れ始めているであろうその人のことを、
私はどうしても忘れられない。


人は人を感動させることができる。
そして、そんな人でも必ず死ぬ。
強烈なほどに突然に教えてくれたその人のことを、
忘れられない。


親しい人がふと、私に言った。
私が死んでも、
その人が亡くなったときほどに
あなたは悲しんでくれないでしょう、と。


私は答えなかった。だけれども。
多分、そうなるのだろう、と今でも思っている。







マレGP感想文はまた明日。
その人の、45回目の誕生日に。